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浦和地方裁判所 昭和32年(ケ)99号 決定 1957年12月27日

債権者 株式会社千葉銀行

債務者 富士繊維工業株式会社

主文

本件申立を却下する。

申立費用は債権者の負担とする。

理由

本件申立の要旨は、債権者は債務者に対して債務者所有の別紙物件目録<省略>記載の不動産につき極度額を二百五十万円とする根抵当権を有していたところ右不動産については川口税務署によつて昭和三十一年七月十八日国税滞納処分による差押がなされ、しかも同税務署において公売の実行をしないので、やむを得ず昭和三十二年七月二十三日国税徴収法施行規則第十七条によつて債務者に代位して別紙債権目録記載の国税等債務を納付した。よつて債権者は債務者に対して民法第五〇〇条第五〇一条により川口税務署の有する国税徴収法第二条第三条による順位の先取特権ある求償権を取得し右先取特権は民法第三〇三条による先取特権に該当するのでこの先取特権ある求償権の弁済をうけるため競売法第二十二条により本件申立に及ぶというのであるが、

租税債権は公法上の債権であるから第三者がこれを代つて納付しても民法第五〇〇条第五〇一条の規定の適用はないものと解するところ他に代位に関する特別規定も存しないので、債権者は川口税務署の有した先取特権の求償権を取得したものということはできない。よつて右先取特権ある求償権を有することを前提とする本件申立は理由がないといわなければならない。よつてこれを却下し申立費用の負担について民事訴訟法第八十九条の規定を適用し、主文の通り決定する。

(裁判官 岡岩雄)

債権目録

一金 四万五千壱百円也

但納税者富士繊維工業株式会社の昭和三十年度国税、源泉税額金弐万九百八拾円也、加算税額金八千七百五拾円也利子税額金壱万壱千八百円也延滞加算税額金参千参百円也滞納処分費金弐百七拾円也計四万五千壱百円也を昭和三十二年七月二十三日株式会社千葉銀行が納税者に代位して川口税務署に納付したことにより生じた求償権債権

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